認知症の親名義の家を売る。病気で意思疎通がとれない。委任状なども書けない状態なら
高齢化が進む現在の日本では、両親が認知症や病気によって意思の疎通が取れない状況にあって不動産の処理に困るという事例がよくあります。
意思の疎通が取れない以上、本人にはどうしようもないので、周囲の人が上手く立ち回っていかなければなりません。
この場合、時間が許せば相続発生を待って、相続による所有権の移転後に、売却を行うといった待ちの対応がある一方、手間はかかりますが、成年後見制度を使って、相続発生を待たずに売却する攻めの対応と二つの手段が考えられます。
相続発生を待つ場合
委任状が書けなければ、そのままでは代理人になれませんから、親が亡くなり、相続が発生するのを持って、所有権を自分に移してから、売却を進める方法を取ることができます。
特に急いで売らなければならない事情が無い場合は、この方法でも良いでしょう。
しかし、共同相続人がいる場合や、遺言書で不動産の取り分の指定が無かったり、あるいはあえて共有状態にさせる遺言だった場合、スムーズに売却手続きが進まない可能性もあります。
不動産が共有の場合は、全権利者の同意がなければ売ることができないからです。
もし、そのような遺言だったならばと仮定して、共同相続人間で意思の疎通を図り、あらかじめ同意を取っておくなどの工夫が必要かもしれません。
一方、もし相続人が自分一人だけの場合はその心配は不要です。
成年後見制度を使う場合
家庭裁判所に申し立てをして親の成年後見人となれば、一定事項について本人に代理して行動することができます。
居住用不動産の売却というのはその中でも重大な行為ですから別途家庭裁判所の許可が必要になります。
裁判所から売却が認められない、許可されないという場合もあります。
つまり、成年後見制度を活用する手続きと、不動産売却の許可を得るための手続きと二つ必要になるということです。
このように、なかなかの手間がかかりますが、どうしても相続発生前に不動産を売却しなければならない事情がある場合は、このようにして対処することができます。
成年後見制度を利用して自らが成年後見人になり、裁判所の許可を取って不動産を売却する場合は、法律的には正当な行為と言えますが、その一方で、共同相続人になり得る兄弟などがいる場合には、売却代金の使い道などで文句を付けられたり、使い込みの疑念を挿まれるなどのトラブルも生じやすいので、できるならば相続人全員で、売却について事前に相談するなど、話し合いをしておく方が良いでしょう。