土地の共有者が行方不明です。不動産を売却したいのですが、どこに頼めばいいですか?
共有不動産のトラブルは概して手間のかかる案件なので、専門家等もあまり関わりたくない事件とされています。
今回は土地の売買をしたいが、その共有持分権利者が行方不明になってしまったとのこと。
登記簿上の権利者の住所を当たっても引越し等の後で事務処理がなされていない場合、それ以降の足取りが消えてしまうこともあるでしょう。
共有持分権者全員の同意が無ければ売れない
不動産の売却は持分権者全員の同意が必要です。
そのため誰か一人が勝手に売るということはできません。
まずは登記簿を確認して現在の共有者全員を探し出す必要があります。
登記簿には持分権者の名前と住所が記載されているので郵便などでコンタクトをとり、売却したい旨を話して交渉することになります。
1人でも反対すれば売却はできませんから、売却代金の取り分などで微妙な交渉になることもあります。
普通は持分の割合の通りに売却代金を分け合うことになりますが、反対をちらつかせて取り分を多く要求する者もでるかもしれません。
その場合はいくらかの譲歩が必要になるでしょう。
このような事案の場合はどこに売却を依頼すればよいのでしょうか。
もし、見つかり全員の合意が取れたら
権利者全員の合意が取れると、不動産業者はやっと手続きに応じてくれます。
権利者全員が本当に合意しているということを確認しなければなりませんから、全員が出向いて仲介契約にサインするか、または代表者に委任状と印鑑証明書を預けて実務にあたる必要があります。
これは、仲介不動産業者に対する手続きですので、業者の宣伝広告の末に買い手が見つかった場合には、その買い手と最終的な売買契約を締結することになります。
この契約の際にも、権利者全員で意思を表示しないといけませんので、全員がそれぞれの名前を契約書に記し、記名押印するか、代表者に適切に委任を行う必要があります。
共有者が見つからない場合、一般の不動産業者では難しい
上記のような事案の場合はそれなりのノウハウと提携先がないと解決できないため、一般的な不動産業者が持つ処理能力で全ての事務処理ができないことが多いので、対応できないと思われます。
こういったケースでは、やはり弁護士や司法書士などの手を借りて、法律的な面から手続きを進めていく方が早いと思います。
どのような事案処理になるのか?
行方不明ということですが、まずは住民票からの追跡調査を行うことになるでしょう。
今回は共有不動産の売却という正当な理由があるので、役所に指定される説明資料(正当理由があることを証明するもの)を持参して手続きをすれば、行方不明者の旧所在地の住民票が手に入ります。
転出や転入の手続きが正しく行われていれば次の移転先が記載されているはずですので、その住所に対してコンタクトを取ります。
これで解決できれば良ですが、転出転入の手続きがなんらかの理由で正しく処理されていない場合は住民票からの追跡は不可能です。
登記簿上の共有持分権者が死亡していた場合
コンタクトを取った結果、その権利者が死亡していた場合は実に厄介です。
その場合は、個別に元の権利者の相続人を調査する必要があります。
関係者への聞き取り調査で、相続人を判明させることもできなくはないですが、正確な相続人調査は弁護士や行政書士等が専門分野とする戸籍調査が必要になってきます。
聞き取り調査だけで相続人が分かっても、もしかしたら隠し子などが居る可能性もあります。
隠し子は関係者には存在が分からないので「隠し子」といわれるわけですが、この存在が後から分かった場合には権利関係の調整が非常に難しくなります。
ですからできることならば戸籍調査を経て完全な相続人数を判明させて、その者等全員の同意を取り付ける必要があります。
さらに下位層の相続人で相続が発生していけばもう手を付けられない状態にもなりかねません。
このようなときは、弁護士や不動産鑑定士に相談されると、他の相続人との交渉や、不動産の分割の価値を明確にできるので、売却を進めやすくなるかと思います。
最後は不在者財産管理人を立てる
どうしても行方不明者の所在が分からなければ裁判所の力を借りることになります。
申立てをしてその行方不明者の代わりに財産を管理する者を立ててもらいます。
代理人のようなものですが、それだけでは財産の「売却処分」に同意する権利は付されていないため、さらに「権限外行為を行う許可」を申請して裁判所に認めてもらえば、その不在者財産管理人の同意を基に不動産の売却ができるようになります。
この手続きは裁判所がからむので機動性が著しく悪く、数か月から長いときは1年くらいかかってしまうこともあります。
問題が起こる前に共有状態は事前に解消すること
このようにいざという時には面倒な手続きが必要になり、時間も費用もかかります。
この間に売却予定の不動産の値減りも起きます。
機を逸し購入者が他に流れてしまうこともあるでしょう。
ただでさえスピーディな換価が難しい不動産はこういう時に困るのです。
ですから特別な目的があってあえて共有状態にする以外は、できるだけ早く共有を解消することが好ましいのです。