複数名義の家を売るのですが、不動産業者に売却を依頼する際、名義人全員の意思確認が必要になりますか?
相続などで土地や建物を取得した際、共同相続人間で共有とするケースや、夫婦で資金を出し合ってマイホームを建てる際に共有にするなどです。
しかし、共有状態は、その時は問題が発生しなくても、後で面倒なことになる可能性が高い保有形態なので、一般的にはお勧めしていません。
今回のように、目的物件を売却する時には、関係者全員の同意が必要になるからです。
不動産の売却は権利者全員の同意が必要
共有状態と言っても、権利者は全員平等ではありません。
持分という概念があって、それぞれの権利を持っている割合のことですが、この持分割合の大小によって、権利行使できる種類が異なってきます。
しかし、売却という行為は、それ以降一切の権利行使ができなくなる行為なので、どんなに低い持分権者にも、売却の可否について判断する権利があるのです。
そして、権利者のうち一人でも売却に反対する者がいれば、売却はできません。
反対者には、説得が必要となります。
「売らなければ困る人」は、反対者に対して、売却代金の取り分を少し上乗せするなどして承諾を取らなければならないので、立場が弱いのですが、その困る度合いが強いほど、譲歩を迫られることになります。
全員の合意が取れたら
権利者全員の合意が取れると、不動産業者はやっと手続きに応じてくれます。
権利者全員が本当に合意しているということを確認しなければなりませんから、全員が出向いて仲介契約にサインするか、または代表者に委任状と印鑑証明書を預けて実務にあたる必要があります。
これは、仲介不動産業者に対する手続きですので、業者の宣伝広告の末に買い手が見つかった場合には、その買い手と最終的な売買契約を締結することになります。
この契約の際にも、権利者全員で意思を表示しないといけませんので、全員がそれぞれの名前を契約書に記し、記名押印するか、代表者に適切に委任を行う必要があります。
持分だけの売却も可能だが
どうしても売却に同意しない者がいる場合は、その物件の売却は不可能です。
しかし、自分が持っている持分については、売却が可能です。
持分だけを買い取る人はほとんどいないので、実効性はあまりありませんが、大きい持分ならば、投機目的で購入する人や業者がいるかもしれません。
ただ、その場合でも、持分売買の社会的システムは整備されていないので、難しいことは変わりません。