父の不動産を売りたいが障害のある家族が反対している。家を売却する上で法的制限はありますか?
家の権利者である父がその家を売却したいという時に、その同居の親族が反対するということは稀にあります。
今回の反対者は精神障害者ということですが、この要素が何らかの影響を及ぼすことはあるのでしょうか。
一般的には不動産も含め、所有権絶対の原則というものがあり、ある物に対して所有権を有している者は、他者の干渉を排して、自分の好きなように処分できることになっています。
そのため、精神障害者の親族が反対しても、父親が家を売るというのならば、それを止めされることは基本的にできません。
では仮の話になりますが、もしこの事案で、父親の家の売却が難しくなるとしたら、どんな事情が考えられるでしょうか。
父親の扶養義務
家の売却に反対している精神障害者が父親の子どもであるなど、父に民法上の扶養義務が生じている場合に、家の売却がなされるとその子供の生活が脅かされ、父親としての扶養義務の遂行が難しくなってしまうなどの事情がある場合には、売却を阻止することができる可能性もないわけではありません。
しかし、それを証明しなければならないので、非常に難しい作業になるでしょう。
家の売却代金を生活費に充てると言われればそれまでですから、父親が売却代金を遊行費等に使い込むことが確実で、子どもは住む家を失くし生活が困窮、生命に危険が及ぶなどを納得性の高い方法で、証明できなければなりません。
且つ、それを裁判上で裁判官に説明し、家の売却をさせないようにする仮処分などを出してもらう必要があります。
自分の子供の住処を失くしてまで売却代金を使い込むことはあまり考えられませんし、父自身も別の住居を用意するでしょうから、障害者の子供も住処に困ることはないでしょう。
こうなると家の売却を阻止しなければならない理由がなくなります。
反対している理由が、法律上保護されなければならない「保護法益」を侵害していなければ、父親の売却行為を止めることはできないでしょう。
単に思い入れのある家だとかという理由は、保護法益にはあたりません。
いずれにしても、その精神障害者の親族がどういう理由で家の売却に反対しているのか、その理由をよく聴取してみて下さい。
売却を行っても、その他の代替行為で、その親族の不満を解消できる方策がないかどうかを検討できるからです。
反対理由によっては、父親側が売却を思いとどまることもあるでしょう。